INTERVIEW
#02
星野 優子
/ HOSHINO YUKO
埼玉県
中学校教員
中学校数学科の教師として2023年現在3校目に勤務。中学1年生担任、特別支援コーディネーター、教育相談を担当。すべての子どもたちに力をつける授業を目指し、日々取り組んでいる。
Q1
星野先生は、学校外でも教師としての学びを続けていると伺いました。
そんな星野先生が、毎日の授業で、いちばん大切にしていることは何ですか?
いちばん大切にしているのは、「笑顔で楽しく授業をすること」です。
教室にいるのは、数学が得意な生徒ばかりではありません。数学の不得手な生徒、中学生でも教科書やノートの使い方が身についていない生徒もいます。学習習慣、学習方法から教えるとともに、苦手な生徒にも安心して授業に参加してもらえるように、「わからなかったら教科書を見ていいよ」「ノートの前ページを参考にしてもいいよ」と声をかけています。
そして、「教室で、みんなで学ぶことは楽しい」ということを感じてほしいと思っています。
Q2
いわゆる「中1ギャップ」について、どんな取り組みをしていらっしゃいますか?
小学校との接続をできるだけ滑らかにしようと考えています。
例えば、数学の教科書を使って、リズムよく・テンポよく授業を進める。これは、小学校の先生だった向山洋一先生(TOSS最高顧問)が行っていた指導方法で、中学校でも効果的です。
また、「小学校6年生の教室で、中学校の先生が授業する」などは、「中1ギャップ」を軽減するためにも効果的だと長谷川博之先生(TOSS副代表)から伺ったことがあります。
以前勤めていた学校では、中学校3年担当だったのですが、小学6年生に授業する機会がありました。そこで、百玉そろばんを使って正負の数の学習を行い、「中学校の授業は楽しそうだ」「自分にもできそうだ」という気持ちを味わわせて、中学校生活を笑顔で迎えられるようにしました。その後、入学してきた生徒に「星野先生だ!」「数学が楽しみです!」と声をかけられることもありました。
Q3
現在の校務分掌で、心がけていらっしゃることはありますか?
学級担任の他に、「特別支援コーディネーター」「教育相談」の担当をしています。
現在、多くの学校で問題になっていることが、「不登校」と「特別支援を要する生徒への対応」です。さまざまな生徒への対応について、学校でも話し合い、よりよい方法を模索しています。
学校では、TOSSで学んで得たさまざまな情報、アプローチの仕方を共有し、その解決に向けて動いています。多くの選択肢を学ぶことによって、対応の幅が広がります。
Q4
TOSSで学びはじめた、きっかけを教えてください。
初任者のとき、タイミングよく手渡されたチラシでTOSSのセミナーを知り、長谷川先生にお会いしたのがきっかけです。
そのとき、長谷川学級の映像を拝見したのですが、中学生がひとつのことに本気で取り組んでいる、そのエネルギーの大きさに衝撃を受けました。
長谷川先生が、向山洋一先生の言葉を引用して「教育は格闘技だ」とおっしゃったのも、強く心に残っています。
そして、チラシをいただいた先生から「サークルを一緒に作りませんか」と提案されたことを契機に、TOSSで学ぶようになりました。
Q5
TOSSでは、どのような学びがありますか?
私は数学の教員なのですが、TOSSでは、数学以外の教科のセミナーやサークルにも参加しています。他教科からの学びも大きいからです。
例えば、国語の授業を受けることによって、「言葉の選び方や発問の仕方ひとつで、生徒たちの思考の深さが変わる」ということを学びました。また、探究的な場面や生徒に挑戦させる場面を、意図的に授業へ取り入れることがありますが、このようなときの「生徒が熱中する授業の組み立て」などは、教科を越えて共通するところが多いです。
また、ほめ方のバリエーション、生徒と接するときの表情・対応方法など、教科が違っていても、役立つことがたくさんあります。
Q6
「教師になってよかった」と思うのは、どんなときですか?
生徒が成長していく姿を見たときです。
小学校で授業に参加できなかった生徒を、中学3年間担任したことがあります。中学入学後も、最初はほとんど教室に入れず、廊下に寝転んだまま。途方に暮れました。
でも、学校で一丸となって、彼への支援方法・体制を検討し、対応しました。彼ができることをひとつずつ増やせるよう、諦めずに支援・指導し続けました。
やがて、彼は教室に1歩足を踏み入れ、自分の席に着けるようになり、授業を受けられるようになり……。最後は卒業式に参加して、元気に巣立っていきました。
中学校3年間は、生徒が心も体も大きく成長していく時期です。その成長に自分が少しでも関われて、変化を目の当たりにできることが、よかったと思うことです。
Q7
TOSSに出会ってよかったことは、何ですか?
子どもの可能性、教育の可能性、自分の可能性を「諦めないで信じていけること」です。
向山先生、長谷川先生をはじめ、TOSSの多くの先生方が、どんな困難な状況の中でも、諦めずに子どもに向き合い、子どもが変容したという事例を学んできました。そのおかげで、「諦めなければ必ず光がある」と思い、自分も目の前の子どもたちに接することができます。