TOSSで学ぶ人たち

INTERVIEW

#05

子どもが、信じられないような成長を遂げる瞬間を
目の前で見られる。
これができる職業は教師だけ。

小嶋 悠紀

小嶋 悠紀

/ KOJIMA YUKI

長野県

元小学校教員

元長野県公立小学校教員(取材時、現役教員)。高校生のときからTOSSで学ぶ。現在は、特別支援教育のスペシャリストとして全国各地に出かけ、子どもたちが笑顔で過ごせるように教育機関へアドバイスをしている。

Q1

特別支援を必要とする子どもも含め、クラスみんなが
互いの個性を受け止め合い、安心して笑顔で1日を過ごすために、
教師として意識すべきポイントを教えてください。

特別支援の観点でいうと、朝、「子どもの様子をしっかり見ること」です。
何か問題が起こったときにコミュニケーションを取りに行くのではなく、朝、学校へ来たときに、子どもの「顔(表情)」「体のこわばり」「緊張しているかどうか」「何か嫌なことがあったかどうか」を見ます。そして、「今日、元気そうだね」や「今日、緊張してない?」「機嫌が悪そうに見えるけど、何かあった?」などの声掛けからスタートします。
授業のときは、「鉛筆が止まる」「天を仰いでしまう」など、そういったわずかな行動を見つける。そして、帰るときには「今日、安心して過ごせたね」と評価を入れる。これに尽きると思います。

Q2

ICT時代だからこそ気をつけたい、
特別支援を必要とする子どもとの付き合い方を教えてください。

さまざまな「学び方」を子どもたちが取捨選択できるのが、ICTの良さです。「私はこれで学んでみたい」というのを実現できます。だからこそ、特別支援の観点は、ものすごく大切です。「あの子は、ここでつまずくんじゃないか」という予想が求められるからです。
子どもがICTでつまずきそうなときは、近くに行って、小さな声でアドバイスをするとよいでしょう。「課題が大きいときは、すこし分解してあげる」「難しくて、機嫌が悪くなったときには、効果的な声掛けをする」「『ちょっと、体を動かしてみよう』と助言する」など。このようなことが、ICT時代の子どもたちの「学び方」と、特別支援の観点を関連させてできることだと思います。

Q3

21世紀型スキルにおけるICT活用について教えてください。

ICTにより、今までノートでやっていたことが、表計算ソフトでもできるようになった。もう少しビジュアル化したかったら、違うアプリケーションも使える。さらに、お互いで共同編集ができる。
このような経験は、「他の人と協働しながら、何かを作り上げる」という21世紀型スキルの基盤になると考えています。

Q4

1人1台端末を使うメリットは何ですか?

「討論」のような名人芸とよばれる授業は、だれでも簡単にできる授業ではありませんでした。しかし、1人1台端末を活用すれば、もっと取り組みやすくなるのではないでしょうか。
例えば、子どもたちがICTを使いこなせるようになると、クラウド上にあるチャットで、「どの子がどんな意見か」を一覧で把握できます。さらに、「あの子に意見を言ってみたい」「あの子の意見を聞いてみたい」「他の子の反対意見も聞いてみたい」という気持ちを自然に引き出すことができます。
名人でなくても、教師自身が子どもの意見を把握できます。
これが、1人1台端末の最大のメリットだと考えています。

Q5

「1人1台端末」時代の「授業力」について教えてください。

1人1台端末以前の授業では、「◯◯くん、言ってごらん」「それに反対する◯◯くん、言ってごらん」と、僕が発問を言い、僕が子どもたちを指名していました。
しかし現在、子どもたちは僕が教えたように、「この教材を解釈するには、これが使えそうだぞ」「今まで勉強してきた、この方法が使えそうだぞ」と、子どもたち自身が見通しを持って学ぶようになりました。新しい教材であろうが、単元であろうが、「教えてきたこと」をそのまま子どもたちが使って、学ぶようになった。
教師の「授業力」が本物であれば、それは子どもたちの「学ぶ力」にすぐ反映されると思います。

Q6

教師になってよかったことは何ですか?

「子どもが、信じられないような成長を遂げる瞬間」を目の前で見られることです。これができる職業は、世界中を探してもない。教師だけです。この最高な瞬間を独り占めできるのが、教師の仕事の最大の魅力です。

Q7

小嶋先生にとってTOSSとは何ですか?

僕は、「TOSSで学んだ」「TOSSで活動してきた」ことが、「生きがい」でした。そして、これからも自分の生きがいだと思っています。